鑿研ぎ #60  ~5年間ありがとうございました。~

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5年前、鑿研ぎ#1から始まったこのカテゴリが、ついに今月で#60となり、当初から決めていた終わりを迎えることとなりました。
研ぎの技術と比例して、木工で得られる収入も少しは安定したものへと変えていきたかったのですが、研ぎに注いだ努力や情熱と比べれば、そちらの方は微々たるものしか注いできませんでした。それでは家族を養えるはずもなく、子供や妻の辛抱を目にするたびに、情けなくて研ぎながら涙を流したこともありますが、どうしても木工を諦めることが出来ずに今日まで来てしまいました。
木工が好き、木が好きだからやめることに未練があったのではなくて、木工をすることそのものが、私にとって宮崎に住み続ける理由や意味になっていたからです。

この5年で読者の方とやり取りしたメールの数はもう膨大なものになるのですが、一度だけ、お叱りに近い内容のメールを頂戴したことがあります。
その文中には、「まるで親の仇のようにして研いでいる」と書かれていた一文があったのですが、私自身もただ単に木工の技術を上げたいからだけではなくて、ここまで研ぎにこだわるのは屈折した意地のようなものもが働いていることは自覚してましたので、読む人が読めばそれが分かるのだなと、大変驚いたことがあります。屈折した意地とは、選択への後悔、故郷への未練、これまでの生き方への懺悔、干渉や容喙への憤り、そのようなものであったと思います。
独学で始めた木工だからこそ、根幹となる研ぎの技術は誰にも負けない本物を身に付けなければ、との思いはとにかく非常に強いものでしたが、純粋に上手くなりからという理由だけで日々砥石に向かっていたのではないのです。

ところで、3年前に副業で始めた早朝のアルバイトを、実は今月からフルタイムの勤務へと変更して頂いたのです。
小学校に入学した長女が大学に入学するような年齢になるまで、売る努力、知ってもらう努力は殆ど何もしてこなかったのですから副業と本業が入れ替わるのは当然の結果だと思います。
それでも去年1年間は、最後の悪あがきかもしれませんが、ポスティングや広報活動をしてみましたし、1年間を全日研ぎ切るという目標も達成しましたので、木工をしばらく横に置く、という今の選択へはわりとスムーズに気持ちの切り替えが出来ました。
去年の練習も最後の数か月は殆ど木工を諦めるためのカウントダウンをしている様な気持ちで日々研いでいたのですよ(苦笑)

今後はこれまでの様にご注文を頂いてお望み通りのものを作り上げていくという職業的な木工ではなくて、自分が作りたい物、使いたい物を作りたいように好きに作って、いつか発表したり、売ってみたり、眺めてみたりと、趣味的で緩やかな、作家的な関わり方を木工とはしていくことになりそうです。
空いた時間は出来るだけ刃物や木に触れていたいので、狭い我が家の一画でも出来る「一畳半の木工」を今模索しているところです。材の下ごしらえにはどうしても機械や広い作業台が必要な場面はありますが、やりたい木工はこれまで以上に機械や電動工具に頼らない木工ですから、私の研ぎの技術が最大限生かせる世界だと思うのです。
以前から四畳半で出来る木工を目指してはいたのですが、ついに一畳半になってしまいました。

そして話は変わりますが、鍛えてきたこの研ぎの技術を研ぎ師として生かせるかもしれないお話も頂戴しておりまして、宮崎でのこれまでの13年間や心血注いできた鑿研ぎ練習は決して無駄ではなかった、むしろ準備の為の期間であったと、いつか思えるようにこれからを生きていくつもりです。

さて、5年間このカテゴリにお付き合い下さいまして本当にありがとうございました。
ひょっとしたら60回を全部お読みになって下さった方もいるかもしれませんね。
このブログには開設当初からコメント欄は設けていませんで、時々頂戴する皆様からのメールが私の楽しみであり、皆様との唯一のつながりでした。
メールだけではなくて、実際にお会いして木工談義、研ぎ談議に花を咲かせたこともありますし、私の研ぎを目標として下さっている方もいらっしゃいます。ホント、これは勿体ないことだと思います。
今後もブログは残していきますし、時々ですが更新もしていきますので、変わらず訪ねて下さればこんなに嬉しいことはありません。

さて、ご覧の写真はこの5年間の八分鑿の変遷です。
長さに関しては、約16mmほど研ぎ減りました。随分短くなったでしょ?
これからも暇なときは練習をしますが、今後はこの八分鑿には製作の方で活躍してもらいます。
今回は最後ですので多めに写真を載せます。良かったらこの後の続きからその他の写真も是非ご覧ください。
本当にありがとうございました。木工 藤原次朗

刃先角度34.0° 残り長さ28.0mm (平成24年2月6日現在) 鑿研ぎ#1
刃先角度33.0° 残り長さ19.4mm (平成25年1月5日現在) 鑿研ぎ#12
刃先角度33.0° 残り長さ16.5mm (平成26年1月6日現在) 鑿研ぎ#24
刃先角度32.5° 残り長さ15.3mm (平成27年1月8日現在) 鑿研ぎ#36
刃先角度33.0° 残り長さ14.1mm (平成28年1月9日現在) 鑿研ぎ#48
刃先角度35.0° 残り長さ12.1mm (平成29年2月11日現在) 鑿研ぎ#60

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by Jiro.Fujiwara | # by atelier_teo | 2017-02-12 17:14 | 鑿研ぎ練習

今日の鑿研ぎ練習 2017.01.31 #366 【最後の練習】 薄鑿の鎬はこれまでの研ぎ人生で最高の研ぎ上がりに

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ご覧の研ぎが、このカテゴリ最後の研ぎとなりました。
2016年の元旦から始めた練習が本日の2017年1月31日で397日目となり、宣言通り、1年間1日も休まずに研ぎ切りました。
ここ何日かずっと薄鑿の研ぎが崩れてまして、今日だけではとても整えきれないほどの状態だったんですが、
最後の最後に無様な研ぎはお見せしたくない一心で、今日は午後から5時間ぶっ続けで修正しました。
残念ながら甲との境目付近には未だ砥石に当たっていないところが残っていますが、私の技量ではこれが限界です。
ただ、もうこれ以上は無理、というところまで直してみましたし、これまでで一番状態は良いはずです。
そして鎬の研ぎ上がりに関してはこれまでの研ぎ人生で最も完璧な研ぎ上がりとなっています。
練習量だけでなく、研ぎ上がりの方も最後に圧倒的なものをお見せすることが叶いました。
明日は398日ぶりに練習をお休みしようと思います。
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八分鑿は1本だけスクラッチ痕が残ってしまいましたが、もう体力が限界でした。
明日からはいよいよ新しい生活が始まります。
次回は鑿研ぎ#60を更新する予定ですが、ちょっとしばらく間が空くと思います。

毎日練習している理由についてはこちらに書いています。
*お尋ねになりたいことやご意見、ご提案などがございましたら、お気軽にこちらまでメールを送って下さい。
 お返事は遅くなることもありますが、必ずさせていただきます。
*過去の記事はカテゴリーごとにご覧いただくのが便利かと思います。
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by Jiro.Fujiwara | # by atelier_teo | 2017-01-31 19:27 | 今日の鑿研ぎ練習

今日の鑿研ぎ練習 2017.01.30 #365

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今日も荒砥から始めて仕上げまで乗せたんですが、刃先も鎬もキッチリ合わず、再度荒砥でガシガシやりました。
なんとか納得できる程度まで鎬が整いましたが、今日は時間切れで中研ぎと仕上げ研ぎは明日に持ち越しました。
ご覧の写真は荒砥で研ぎ終わった後の状態で、灰色の枠で囲んだ部分は刃先が丸まっています。
どう研いでも、どれだけガシガシやっても、程度の差こそあれ最近は必ずそこが丸まってしまいます。
原因はまだよくわかりませんが、研ぐときの指の置き方とか加圧の加減などに原因がありそうです。
いよいよ明日で終わりですから、少しはまともな状態をお見せしたいんですが、どうかなぁ?
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八分鑿は完全な平面に研ぎ上がっています。

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by Jiro.Fujiwara | # by atelier_teo | 2017-01-30 19:27 | 今日の鑿研ぎ練習

今日の鑿研ぎ練習 2017.01.29 #364 修正が振り出しに・・・。

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昨日、あまりにも鎬が崩れましたので、今日は予定通り荒砥から研ぎ始めました。
この薄鑿を荒砥で研ぐのは購入してから初めてで、それくらい今は研ぎそのものが安定していないのだと思います。
今までもそういうことはあったのでしょうが、私自身がただ気付けていなかっただけなのかもしれません。
ともかく今日は久しぶりに荒砥を引っ張り出しての研ぎとなりました。
丸刃の状態はそこまで酷いものではありませんでしたが、刃先の丸まり具合はとにかく酷く、そこが当たり始めるまでに相当時間を食いました。
ご覧の写真はガシガシと1時間研ぎ続けた後に撮ったもので、灰色の枠で囲んだ部分がまだ砥石に当たっていない状態です。
今日はここで一旦止めて、また明日荒砥から研ぎ始めてもよかったのですが、とりあえず仕上げまで乗せてみました。
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こちらが北山で研ぎ終わった後です。
きっちり研げば#1000と#2000で刃先が全部当たるかも?という淡い期待もあったんですが、ちょっと甘かったですね。
それだけでなく、赤丸で囲んだ砥石に当たっていない部分も大きな状態で現れてしまいました。
振り出しに戻った感じでガッカリですが、斜め研ぎと引き研ぎを多用して鎬を整えればこうなることはある程度予想してはいました。
カテゴリを終えるまであと2日しかありませんが、明日は鎬を整えつつも、赤丸で囲んだ部分の大きさを少しでも小さくしてみたいと思います。
刃先の感じだと、もう一度荒砥から始めた方が早いでしょうね。
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八分鑿もまだキモチ鎬が中高ですが、研ぎムラとなって現れるほどではありません。

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by Jiro.Fujiwara | # by atelier_teo | 2017-01-29 18:19 | 今日の鑿研ぎ練習

今日の鑿研ぎ練習 2017.01.28 #363

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今日は赤丸部分の修正は置いといて、乱れた鎬を整える目的で研ぎました。
鎬の乱れを整えるには、斜め研ぎが有効なんですが、最近は横研ぎばかりしていたからか、
久しぶりの斜め研ぎが随分と勝手が悪く、整うどころか幅方向への丸刃をも生じさせてしまいました。
今の薄鑿の鎬の状態は、中央部分がかなり高くなっていて、特に鋼にある黒っぽい部分はかなり巻いてしまっています。

赤丸部分の大きさは、昨日より格段に小さくなっていますけど、両サイドばかりが減る様な研ぎをしていたからです。
この薄鑿は確か荒砥で研いだことはないのですが、明日はちょっと荒砥から始めるかもしれません。
そのくらい今の鎬の状態は悪いです(+_+)
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八分鑿も今日はキモチ中高の仕上がりになりました。

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by Jiro.Fujiwara | # by atelier_teo | 2017-01-28 15:55 | 今日の鑿研ぎ練習


「木工 藤原次朗」の製作記録

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