鑿研ぎ #14
鑿研ぎ #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13の続き
いつも研ぎ終わった後の写真ばかりを掲載してましたので、今回は研いでる最中の写真もご覧いただこうと考えました。
少しでも上手く研げなくて悩んでいる方の参考になればと思い、普段よりしつこく研いで砥面の状況を分かりやすくしてみました。
写真の砥石は皆さんもよくご存知の刃の黒幕の#1000です。
同じく刃の黒幕の#2000です。
最後に北山の#8000です。
どの砥石も真っ先に目が行くのはストロークの長さであったり、砥石の使い方、だと思うのですが、上手く研げなくて悩んでいる方、特に研いでも切れない方、平面に研げない方、に見て欲しいのは、すべての砥石の上で最初から刃幅一杯の研ぎ跡が出ていることと、鎬の跡がくっきりと残っていること、それから、鎬に付いた砥泥の様子、になろうかと思います。
刃が付いたかどうかを判断するには産毛を剃ったり切ったりする他に、杉の木口を削ってみたりしています。
写真はスカスカの杉の白太ですがちゃんと刃が付いていれば、ストレス無く鑿が差せます。
いちいち確認しませんが、仕事で使う鑿は常にこの程度の切れ味はキープしています。
今回はあまり傷も残らず、納得のいく研ぎが出来ました。
では、昨年の2月からの推移です。
刃先角度34.0° 残り長さ28.0mm (平成24年2月6日現在)
刃先角度31.5° 残り長さ27.6mm (平成24年3月2日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ26.9mm (平成24年4月9日現在)
刃先角度33.5° 残り長さ26.3mm (平成24年5月8日現在)
刃先角度33.5° 残り長さ25.7mm (平成24年6月9日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ24.6mm (平成24年7月7日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ24.0mm (平成24年8月4日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ23.4mm (平成24年9月3日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ22.3mm (平成24年10月4日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ21.4mm (平成24年11月9日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ20.8mm (平成24年12月7日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ19.4mm (平成25年1月5日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ18.9mm (平成25年2月2日現在)
刃先角度32.5° 残り長さ18.7mm (平成25年3月4日現在)
今月は後半で研げない日もあったり、日数が少ないことも関係しましたが、0.2mmしか減りませんでした。
もちろんサボったわけではなくて、先月同様チャッチャッと終われることが多かったからだと思います。
感覚としては結構しっかり研いでるつもりですが、以前より明らかに#2000での研ぎ直しや、面直しの回数が減っています。
角度については時々確認していますが、今月は敢えて一度も確認しませんでした。だからでしょう、やはり寝てしまう方向での結果となりました。0.2mmしか研ぎ減っていないのに、0.5度も倒れてしまったのはちょっと残念でした。
この刃先の角度を33度で研いでいる理由について、先日読者の方から質問のメールをいただきました。
この方は私などよりもはるかに腕が良く、また志も高く、立派な仕事をされているであろうことがメールの内容から推察されました。そういった本職の方に限らず、33度で研いでいることについて疑問に思っている方は少なくないと思います。なぜなら、この33度という角度は鑿研ぎの角度としてはベストではないからです。以前からこのことについて理由を書いておいた方が良いかな?と思っていましたので、返信したメールの内容を引用しながらこの機会に書き残しておこうと思います。
理由は三つあります。
一つ目は、この鑿は“仕事で使わないから”ということになります。
仕事で使うならやはり30度前後で研ぎます。質問を下さった方も書いておられましたが、追入れ鑿はこの近辺の研ぎ角が一番切れて長切れしますし、差鑿や突鑿はもっと寝かせます。ただ私の場合は向待鑿の出番が多いのですが、これらのガンガン叩く系の鑿については最後の最後に刃先を起こして2~3回引き研ぎをして仕上げています。このときの刃先の角度は33度以上になっていると思われます。
丸刃の鑿が切れなかったり、すぐ切れ止むのは、鎬がいくら鋭く倒れていようとも、肝心の刃先が必要以上に鈍角になってしまっているからです。欠けたりこぼれたりはしにくいでしょうが、だからといって長切れはしません。
二つ目の理由は、“あえて起こし気味の角度を保てるような練習をしている”ということになります。
以前こちらやこちらでも書きましたが、鎬を平面に研ぐことは出来ても、研ぎ角がどんどんと寝てくる研ぎ癖に悩んでいる時期がありました。今月の結果を見てもそれは明白ですが、今でも油断をすると寝てきます。おそらく、お越し気味のストロークが苦手なのだと思います。
三つ目の理由は、“起こして研がないと、鎬の面積が大きく見えて格好が悪いから”ということになります。
この練習用の鑿はホームセンターで売られているような安価な鑿なのですが、通常の追入れ鑿に比べると、穂の厚みがかなりぶ厚いのではないかと思います。皆さんと同じように平面に研いでいるはずなのに、私のはなんか締まらなくて格好悪い、と思いネットで上手な方の画像を見ていましたら、穂の厚みに気が付きました。また、最近は裏も#2000で研いできた結果、鋼の厚みも徐々に薄くなってきて、一段と地金の面積が増え、締まらない見た目になってきました。これ以上寝かせたくない気持ちはますます強くなっています。
以上の3点が刃先の角度を33度にして研いでいる理由です。
今月は寝てしまいましたので、また一月かけてせっせと起こしていこうと思います。
鑿研ぎ #15へ
この鑿研ぎ練習のカテゴリに関連する過去記事を時系列で載せておきます。
追入鑿の四厘と、向待鑿の一分五厘[ 2012-11-03 23:42 ]
仕込み:追入鑿の四厘と、向待鑿の一分五厘[ 2012-11-14 20:32 ]
底さらえ鑿の一分五厘[ 2012-12-11 17:44 ]
刃の黒幕#1000:砥石メモ①[ 2012-12-18 19:57 ]
刃の黒幕#2000:砥石メモ②[ 2012-12-26 17:15 ]
*お尋ねになりたいことやご意見、ご提案などがございましたら、お気軽にこちらまでメールを送って下さい。
*過去の製作記録や一覧はContents Listにまとめています。
いつも研ぎ終わった後の写真ばかりを掲載してましたので、今回は研いでる最中の写真もご覧いただこうと考えました。
少しでも上手く研げなくて悩んでいる方の参考になればと思い、普段よりしつこく研いで砥面の状況を分かりやすくしてみました。
写真の砥石は皆さんもよくご存知の刃の黒幕の#1000です。
同じく刃の黒幕の#2000です。
最後に北山の#8000です。
どの砥石も真っ先に目が行くのはストロークの長さであったり、砥石の使い方、だと思うのですが、上手く研げなくて悩んでいる方、特に研いでも切れない方、平面に研げない方、に見て欲しいのは、すべての砥石の上で最初から刃幅一杯の研ぎ跡が出ていることと、鎬の跡がくっきりと残っていること、それから、鎬に付いた砥泥の様子、になろうかと思います。
刃が付いたかどうかを判断するには産毛を剃ったり切ったりする他に、杉の木口を削ってみたりしています。
写真はスカスカの杉の白太ですがちゃんと刃が付いていれば、ストレス無く鑿が差せます。
いちいち確認しませんが、仕事で使う鑿は常にこの程度の切れ味はキープしています。
今回はあまり傷も残らず、納得のいく研ぎが出来ました。
では、昨年の2月からの推移です。
刃先角度34.0° 残り長さ28.0mm (平成24年2月6日現在)
刃先角度31.5° 残り長さ27.6mm (平成24年3月2日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ26.9mm (平成24年4月9日現在)
刃先角度33.5° 残り長さ26.3mm (平成24年5月8日現在)
刃先角度33.5° 残り長さ25.7mm (平成24年6月9日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ24.6mm (平成24年7月7日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ24.0mm (平成24年8月4日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ23.4mm (平成24年9月3日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ22.3mm (平成24年10月4日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ21.4mm (平成24年11月9日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ20.8mm (平成24年12月7日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ19.4mm (平成25年1月5日現在)
刃先角度33.0° 残り長さ18.9mm (平成25年2月2日現在)
刃先角度32.5° 残り長さ18.7mm (平成25年3月4日現在)
今月は後半で研げない日もあったり、日数が少ないことも関係しましたが、0.2mmしか減りませんでした。
もちろんサボったわけではなくて、先月同様チャッチャッと終われることが多かったからだと思います。
感覚としては結構しっかり研いでるつもりですが、以前より明らかに#2000での研ぎ直しや、面直しの回数が減っています。
角度については時々確認していますが、今月は敢えて一度も確認しませんでした。だからでしょう、やはり寝てしまう方向での結果となりました。0.2mmしか研ぎ減っていないのに、0.5度も倒れてしまったのはちょっと残念でした。
この刃先の角度を33度で研いでいる理由について、先日読者の方から質問のメールをいただきました。
この方は私などよりもはるかに腕が良く、また志も高く、立派な仕事をされているであろうことがメールの内容から推察されました。そういった本職の方に限らず、33度で研いでいることについて疑問に思っている方は少なくないと思います。なぜなら、この33度という角度は鑿研ぎの角度としてはベストではないからです。以前からこのことについて理由を書いておいた方が良いかな?と思っていましたので、返信したメールの内容を引用しながらこの機会に書き残しておこうと思います。
理由は三つあります。
一つ目は、この鑿は“仕事で使わないから”ということになります。
仕事で使うならやはり30度前後で研ぎます。質問を下さった方も書いておられましたが、追入れ鑿はこの近辺の研ぎ角が一番切れて長切れしますし、差鑿や突鑿はもっと寝かせます。ただ私の場合は向待鑿の出番が多いのですが、これらのガンガン叩く系の鑿については最後の最後に刃先を起こして2~3回引き研ぎをして仕上げています。このときの刃先の角度は33度以上になっていると思われます。
丸刃の鑿が切れなかったり、すぐ切れ止むのは、鎬がいくら鋭く倒れていようとも、肝心の刃先が必要以上に鈍角になってしまっているからです。欠けたりこぼれたりはしにくいでしょうが、だからといって長切れはしません。
二つ目の理由は、“あえて起こし気味の角度を保てるような練習をしている”ということになります。
以前こちらやこちらでも書きましたが、鎬を平面に研ぐことは出来ても、研ぎ角がどんどんと寝てくる研ぎ癖に悩んでいる時期がありました。今月の結果を見てもそれは明白ですが、今でも油断をすると寝てきます。おそらく、お越し気味のストロークが苦手なのだと思います。
三つ目の理由は、“起こして研がないと、鎬の面積が大きく見えて格好が悪いから”ということになります。
この練習用の鑿はホームセンターで売られているような安価な鑿なのですが、通常の追入れ鑿に比べると、穂の厚みがかなりぶ厚いのではないかと思います。皆さんと同じように平面に研いでいるはずなのに、私のはなんか締まらなくて格好悪い、と思いネットで上手な方の画像を見ていましたら、穂の厚みに気が付きました。また、最近は裏も#2000で研いできた結果、鋼の厚みも徐々に薄くなってきて、一段と地金の面積が増え、締まらない見た目になってきました。これ以上寝かせたくない気持ちはますます強くなっています。
以上の3点が刃先の角度を33度にして研いでいる理由です。
今月は寝てしまいましたので、また一月かけてせっせと起こしていこうと思います。
鑿研ぎ #15へ
この鑿研ぎ練習のカテゴリに関連する過去記事を時系列で載せておきます。
追入鑿の四厘と、向待鑿の一分五厘[ 2012-11-03 23:42 ]
仕込み:追入鑿の四厘と、向待鑿の一分五厘[ 2012-11-14 20:32 ]
底さらえ鑿の一分五厘[ 2012-12-11 17:44 ]
刃の黒幕#1000:砥石メモ①[ 2012-12-18 19:57 ]
刃の黒幕#2000:砥石メモ②[ 2012-12-26 17:15 ]
*お尋ねになりたいことやご意見、ご提案などがございましたら、お気軽にこちらまでメールを送って下さい。
*過去の製作記録や一覧はContents Listにまとめています。
by Jiro.Fujiwara |
by atelier_teo
| 2013-03-04 22:12
| 鑿研ぎ練習